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■「これだよ、これなんだよ」父が取り出した薬は粉薬だ。
■先週病院でもらった薬を見せるよう、告げた返事がこれだった。一瞬あっけにとられたが、気を取り直す。現実を見つめ直そう。
■妻が付き添って、去年の暮れに病院の先生と話し合った結果、本人が粉薬が苦手のようだから、今後は錠剤に切り替えましょうと決めたはず。
■体だけは至って元気。95歳になった今でも、アルバイト先まで自転車で出かけている。妻の知人はそれを聞いて誰もが驚く。
■しかし、予約した日を忘れてしまう、診察券を無くしてしまう、一ヶ月分の薬を出しているのに数週間後には無くなったといって取りに来る、等々。看護婦さんから聞くとこれが父の現実だ。あまりに頻繁に薬をもらいに来るので、悲鳴を上げ、今後は家族と一緒に来院するよう先生から告げられた。
■介護保険を利用して、ヘルパーに援助を頼んだらどうかと最初勧めてくれる。ところが本人はなぜそんな話が出てくるのか理解していない。その前に、保険証を見せてくれといったら、「そんなものあったかな」書類入れを探し回ったら、母の保険証が見つかる。何度も勧めると、怒り出す。
■腰の曲がった母には頼めない。長男の私が週日通って、薬を管理し、妻が父の通院に同伴することにした。今後は本人が来ても薬を渡さないよう申し入れた。
■先週病院でもらったばかりの錠剤がなぜ、去年無くしたはずの粉薬に化けたのか、さっぱりわからない。本人は心許ない、今後は病院の窓口から本人に渡さないようにしよう、そう妻と話し合う。
■この道はいつか来た道、やがて行く道。

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