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■脳天気なおじさんでも眠れなくて困った時期がある。近くの医者に診てもらって、睡眠薬の処方箋を出してもらった。長期に出すわけに行かないらしくて、二週間分。あっという間になくなる。あせればあせるほどその状態から抜け出せなくなる。お酒から睡眠薬へ、それでも足らずに儀式やらお祈りやらに手を出した。
■睡眠とか安眠に関する本をどっさり買い込んだ。ある本で、「メラトニンは、アメリカでは健康食品として入手できうるところから、時差ぼけ防止薬として旅行者に人気が高い」という文章が気になっていた。*1いつかアメリカ旅行の機会があったらぜひ買いだめしておこう。
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■その機会がやってきた。なるほどメラトニンは旅行者にとっても入手しやすい。ラスベガスに着いた日、文字通り空は抜けるような青空。しかし時差ぼけと旅の疲れで、体はくたくた。「お願い、もうちょっと寝かせてよ」つぶやく妻を無理矢理起こして、郊外のアウトレットへ。妻は衣料品、私は医薬品。
■「何かお探しですか」とがっしりした(その体重に圧倒される)50代の店主と見えるおじさんに声をかけられる。「いやなに、メラトニンてやつを」「お客さん、ちょうどいいところへ来たね、今セールス中だから二瓶目は半額だよ」後で領収書を見ると、一瓶17ドル2セントで、二瓶で25ドル53セント。一瓶480錠入り。毎晩飲んでも一年以上持つ。
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■毎晩飲んでも4年近くは持つだけ買いだめした今、実はほとんど飲んではいない。今夜はぜひ寝ておきたいというときだけだ、飲むのは。無くとも、今は横になったらすとんと寝入ってしまうのだ。あの時期はいったい何だったのだろう。
*1 「快適睡眠のすすめ」堀忠雄、岩波新書
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